食用のふぐの種類とその可食部位は下表のとおりです。なお、下表は日本の沿岸域、日本海、渤海、黄海及び東シナ海で漁獲されたふぐに限り適用されます。
クサフグ
【可食部位】筋肉
【特徴】ショウサイフグ、マフグの幼魚に似るが背面と体側面は暗緑色地に小白斑が散布し、背面・腹面に小棘が密生している。全長15センチメートル以下の小型種。
【分布】北海道を除くわが国沿岸、韓国の釜山、台湾
【その他】沿岸で最も普通に見られるフグ。6月頃、海岸に群れをなして集まり産卵する。市場にまとまって入荷されることはほとんどない。
コモンフグ
【可食部位】筋肉
【特徴】体色は暗緑褐色地にほぼ円形の小白点がある。尻びれが淡黄色であることで、ショウサイフグ、ナシフグと区別できる。コモンフグの背面・腹面には小棘が密生している。全長25センチメートル以下の小型種。
【分布】北海道以南のわが国沿岸各地、韓国、台湾
【その他】岩手県越喜来湾及び釜石湾並びに宮城県雄勝湾で漁獲されたものは食用不可。市場には、ショウサイフグの箱に混ざって入荷されることがある。
ヒガンフグ
【可食部位】筋肉
【特徴】体色は暗褐色地に黒斑が散布している。体表前面に皮質の小突起が散在しているが、棘はない。全長35センチメートルになる中型種。
【分布】日本各地沿岸、黄海、東シナ海
【その他】岩手県越喜来湾及び釜石湾並びに宮城県雄勝湾で漁獲されたものは食用不可。市場に、鮮魚でまとまって入荷される。また、ショウサイフグの箱に混ざって入荷されることもある。東京では「アカメフグ」と呼ばれる。
ショウサイフグ
【可食部位】筋肉、精巣
【特徴】背面は茶色の地色に濃褐色の斑紋があり大型魚ではこれがとぎれて点状になる。ゴマフグ、コモンフグ、クサフグ、及びマフグの幼魚に似ているが、しりびれが白く、尾びれの下縁が白いことで区別できる。背面、腹面に小棘なく、平滑である。全長35センチメートルになる中型種。
【分布】 東北地方から九州沿岸、特に西日本に多く分布する。
マフグ
【可食部位】筋肉、精巣
【特徴】体色は、背面暗緑褐色で不明瞭な斑紋がある。体側中央に黄色線が走るがいずれも成長するに従い不明瞭となる。腹面は白色。背、腹面ともに棘はなく、滑らか。胸びれ後方上部には大黒紋があるが、トラフグやカラスのように白いふちどりはない。しりびれは黄色い。全長50センチメートルになる中型種。
【分布】サハリン以南の日本海、北海道以南の太平洋、黄海、東シナ海
【その他】 肝臓の毒量が多い。市場には未処理や身欠きの状態で入荷される。
メフグ
【可食部位】筋肉、精巣
【特徴】胸びれ後方と背びれ基部に不明瞭な白輪で囲まれた黒紋がある。背面、腹面に小棘がある。 全長45センチメートルになる中型種。
【分布】東シナ海、南シナ海、これに注ぐ河川
【その他】サンサイフグの成魚に似ている。市場にはほとんど入荷されない。
アカメフグ
【可食部位】筋肉、精巣
【特徴】背面、腹面は桃色または赤褐色の地色に小黒点が散在。各ひれは赤褐色である。背面・腹面は、ともに小棘がなく、平滑である。 全長25センチメートル程度の小型種。
【分布】本州中部の太平洋沿岸
【その他】市場にはたまに入荷される。
トラフグ
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】体色は背面暗緑黒色で腹面は白色。側面には斑点が多く、胸びれ後方上部には白くふちどられた大黒紋がある。背及び腹には鋭い小棘(とげ)が密生している。しりびれは白くカラスと区別される。全長80センチメートル以上になる大型種。
【分布】太平洋側では室蘭以南、日本海西部、黄海、東シナ海
【その他】市場の入荷は、非常に多い。活魚、鮮魚、身欠き等で入荷する他、ヒレ乾燥品、白子豆腐等の加工品としても多く流通している。
カラス
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】体色は背面紫がかった黒色で腹面は白色。体側の斑点はトラフグより少なく不明瞭。胸びれ後方にはトラフグと同様の大黒紋がある。背及び腹には鋭い小棘(とげ)が密生する。しりびれが黒いのでとらふぐと区別される。 全長50センチメートルになる中型種。
【分布】主として東シナ海、黄海
【その他】市場には、たまに入荷される。
シマフグ
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】背面、側面が青黒色の地色に背面から体側後方に向かって白い縞が走っている。個体によって、縞がとぎれて白点状になったものもある。各ひれは美しい黄色を呈し判別はきわめて容易。背面、腹面は小棘が密生している。 全長60センチメートル以上になる大型種。
【分布】相模湾以南、黄海、東シナ海
【その他】市場には、しばしば入荷される。
ゴマフグ
【可食部位】筋肉、精巣
【特徴】背面、体側面に藍青色の小点が密に分布、背面・腹面には小棘が密生している。しりびれはレモン色。 全長40センチメートルになる中型種。
【分布】 函館以南、黄海、東シナ海、日本海に比較的多い
【その他】 市場にしばしば入荷される。ショウサイフグやゴマフグ、コモンフグ等、背中に小斑のあるフグを「ゴマフグ」と称することもあるが別種である。
カナフグ
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】背面は淡い暗青色で、模様や斑紋はない。体側が銀白色でシロサバフグによく似ているが、体表に小棘はなく、腹面に小粒状突起があること、鰓穴(えらあな)が黒いことで区別できる。全長1メートルになる大型種。
【分布】南日本、東シナ海、南シナ海、インド洋
【その他】市場にはほとんど入荷されない。
シロサバフグ
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】背面は緑黄色で体側は銀色光沢があり、腹面は白色。尾びれの中央部はいくらかへこみ、上下端が白く、下方は白か灰色である。 全長35センチメートルになる中型種。
【分布】鹿児島県以北のわが国沿岸、東シナ海
【その他】市場には鮮魚として入荷するよりも一夜干しやちり材などの加工製品として入荷されることが多い。
クロサバフグ
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】体色は背面が淡い暗緑色で模様や斑点はない。体側は金色又は銀色光沢があり、腹面は白色である。背面特に頭部付近と腹部に顕著な小棘が密生している。尾びれの上下端は鮮やかな乳白色である。尾びれの中央部は、突出している。
全長40センチメートルになる中型種。
【分布】九州から北海道南部の太平洋側、南シナ海、東シナ海
【その他】 市場には鮮魚よりも一夜干しやちり材などの加工製品として市場に入荷されることが多い。
ヨリトフグ
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】 背面は淡い褐色で尾びれ下方が白い。皮には小じわのような細かい線があり、全体に皮がたるんでいるような感じ。水を飲んでいることが多く腹はたるんでいる。全長40センチメートルになる中型種。
【分布】本州中部以南、世界中の暖海
【その他】市場にほとんど入荷されない。
サンサイフグ
【可食部位】筋肉
【特徴】体色は濃褐色で腹は白色。体色と斑紋は個体の成長によって変化する。胸びれ後方に不定形の黒紋。背面及び腹面に小棘がある。全長40センチメートルになる中型種。
【分布】渤海、黄海、東シナ海
【その他】市場にはほとんど入荷されない。
イシガキフグ
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】体の表面を強くて短い棘がおおっている。棘は3根または4根あり、動かすことはできない。上下の両あごはそれぞれ1個ずつのくちばし状の歯がある。 全長60センチメートルになる大型種。
【分布】本州中部以南の暖海
【その他】市場にほとんど入荷されない。
ハリセンボン
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】体は長卵形。体の表面を強くて長い棘がおおっている。これらの棘は動かすことができる。全長30センチメートル以下の小型種。
【分布】本州中部以南の暖海
【その他】市場には幼魚が活魚で入荷する程度である。
ヒトヅラハリセンボン
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】体の表面には多数の長い棘がある。背面には数個の大黒紋がある。眼は大きく、口は小さい。全長60センチメートル以上になる大型種。
【分布】沖縄以南、中部、西部太平洋
【その他】市場にはほとんど入荷されない。
ネズミフグ
【可食部位】筋肉、皮、精巣
【特徴】体の表面には多数の長い可動性の棘がある。背面・体側・ひれに小黒点が散在。腹面に小黒点はない。全長80センチメートルになる大型種。
【分布】沖縄、全世界の熱帯域
【その他】市場にはほとんど入荷されない。
ハコフグ
【可食部位】筋肉、精巣
【特徴】体は骨質の固い甲羅で棘はない。背部の側方と腹部の側方に左右それぞれ1隆起線がある。
【分布】本州中部以南の暖海
【その他】市場には活魚として若干入荷される程度である。
ナシフグ
【可食部位】 筋肉※1、精巣※2
【特徴】 胸びれ後方上部に黒紋があり、周囲が白く菊の花のように形どられている。背面・腹面ともに小棘はなく、平滑である。全長30センチメートルの小型種。
【分布】瀬戸内海、九州西岸、黄海、東シナ海
【その他】 ※1 有明海、橘湾、香川県及び岡山県の瀬戸内海域で漁獲されたものに限る。
※2 有明海及び橘湾で漁獲され、長崎県が定める要領に基づき処理されたものに限る。
参考文献
・一般社団法人東京都食品衛生協会:ふぐ取扱責任者教本(2023年)
こちらのページは東京都市場調査所様からのご厚意で引用させて頂いております